【完全理解】SIer 業界 がブラックな理由を解説【わかりやすさ重視】
こんにちは。SE の闇が深すぎたので Web 系に転職した Nash です。
この記事は「どうして SIer 業界 がブラックになってしまうのか?の背景を解説する記事」です。
下記の流れで進めます
- ① 前提知識の確認
- ② ブラックの内容/原因
複雑な背景なので、脱線しないようにトピックを短くして、わかりやすさ重視で書いていきます。
では見ていきましょう。
※SIer 業界も広いので、必ずしもこの記事の通りではないです。
※ SE =システムエンジニア、で SIer 系の話です。
SIer がブラックになる前提知識
まずは、SIer 業界に対する前提知識を整理していきます。
「SIer がブラック」の原因は多く複雑です。
自分の考える全体の関係図が下記です。
(この図でも全貌を語り尽くせれていないです)
digraph G {
graph[rankdir=TB]
{rank=min;ウォーターフォール;業界構造;人月商売;}
// from 業界構造
業界構造 -> 多重下請け構造
// from 多重下請け構造
多重下請け構造 -> 伝言ゲームのリスク->power_balance
多重下請け構造 -> ピンハネ
多重下請け構造 -> power_balance
// from ウォーターフォール
ウォーターフォール -> 手戻りリスク -> power_balance
ウォーターフォール -> 作業の平坦化
// from ピンハネ
ピンハネ -> 技術者軽視 -> 技術力の低下
ピンハネ -> unchangable_cost
ピンハネ -> マネジメント優位-> 作業の平坦化
// from 人月商売
人月商売 -> 作業の平坦化
// from 作業の平坦化
作業の平坦化 -> チャレンジ不可
// from チャレンジ不可
チャレンジ不可 -> 技術力の低下
// from power_balance
power_balance -> unchangable_shcedule -> overwork
power_balance -> unchangable_cost -> overwork
// define
overwork [label=下層会社が残業]
unchangable_shcedule [label=リスケ不可]
unchangable_cost [label=コスト要求不可]
power_balance[label=力関係]
}
はい。複雑ですね。
でも、ブラウザバックしないでください!
重要なポイントを絞って説明しますので。
最初は、もっとも重要な「SIer の業界構造」です。
業界構造=ピラミッド
SIer の業界構造は、ピラミッド構造。
「IT ゼネコン」とも言われます。
SIer 業界での大規模システム開発って、超簡単に言うと「複数社で超大掛かりな伝言ゲーム」で実現します。
digraph G {
graph[bgcolor="#999999"]
"発注元の会社" -> x1
subgraph cluster_sub1{
graph[bgcolor="#FFFFFF"; label="SIer業界"; labeljust="l"]
x1 -> y1
x1 -> y2
y1 -> z1
y1 -> z2
y2 -> z3
y2 -> z4
}
x1[label=一次請け]
y1[label=二次請け1]
y2[label=二次請け2]
z1[label=三次請け1]
z2[label=三次請け2]
z3[label=三次請け3]
z4[label=三次請け4]
}
ピラミッドですね。この図の通りに SIer 業界では、仕事が流れます。
- ピラミッドの上から仕事が振ってくる。
- 上層の会社 = 要件定義〜設計。
- 下層の会社 = プログラミング・テスト。
- 上層で作るモノを決める ⇒ 下層で作る
- =伝言ゲーム
こんな感じです。
実際にみずほのシステム統合では、このピラミッドにて約 1000 社も関わっていたとか。
▷みずほシステム統合の謎、参加ベンダー「約 1000 社」の衝撃 | 日経 xTECH(クロステック)
どんだけでかいピラミッドになるんだ、これ。
業界構造 ⇒ 多重下請け構造
多重下請け構造とは、請け負った案件をそのまま別の会社に依頼していくビジネスモデルです。
SIer では、ピラミッドの上から下へ仕事を流すことです。
digraph G {
発注会社 -> 一次請け [label="「作ってくれ」"]
一次請け -> 二次受け [label="「作ってくれ」"]
二次受け -> 三次受け [label="「作ってくれ」\n「作ります!」"]
}
開発手法=ウォーターフォール
ウォーターフォールとは、工程を厳格に管理して1工程ずつ確実に終わらせて順々に進める開発手法です。
- 「要件定義 ⇒ 設計 ⇒ 実装 ⇒ テスト ⇒ リリース」の、流れ。
- 「後半に問題が発覚したとき、手戻りコストが膨大」という特徴。
digraph G {
node [shape="box"; width=1.2]
要件定義 -> 設計 -> 実装 -> テスト -> リリース [shape="box"]
}
こんな流れです。
手戻りコストですが、例えば、リリース直前に「設計間違えた!」となると「設計 → 実装 → テスト」と多くの手戻り作業が必要になるわけです。
具体例を「家を建てる作業」で考えます。
-
建築家:家を考える(要件定義〜設計)
-
大工:家を作っていく(実装〜リリース)
こんな感じです。
ちなみに、よく勘違いされますがウォーターフォールという開発手法がダメってことではないです。
(たしかに、すでに旧時代的な手法ではありますが。)
これと他の要素が混ざった時にブラックな SE が爆誕してるだけです。
人月商売
作業量に「人月」という単位を使う見積もり手法です。
定義=「1人で1ヶ月かかる作業量を1人月」です。
▼ 例
- 10人月 = 10人が1ヶ月必要な作業量
- 10人月 = 1人が10ヶ月必要な作業量
人月商売は個人の能力差を考慮できないです。
理由は、見積もり時点で「どのタスクを誰がやるか」が決まっていないからです。
SIer のブラックを見ていく
digraph G {
graph[rankdir=TB]
{rank=min;ウォーターフォール;業界構造;人月商売;}
// from 業界構造
業界構造 -> 多重下請け構造
// from 多重下請け構造
多重下請け構造 -> 伝言ゲームのリスク->power_balance
多重下請け構造 -> ピンハネ
多重下請け構造 -> power_balance
// from ウォーターフォール
ウォーターフォール -> 手戻りリスク -> power_balance
ウォーターフォール -> 作業の平坦化
// from ピンハネ
ピンハネ -> 技術者軽視 -> 技術力の低下
ピンハネ -> unchangable_cost
ピンハネ -> マネジメント優位-> 作業の平坦化
// from 人月商売
人月商売 -> 作業の平坦化
// from 作業の平坦化
作業の平坦化 -> チャレンジ不可
// from チャレンジ不可
チャレンジ不可 -> 技術力の低下
// from power_balance
power_balance -> unchangable_shcedule -> overwork
power_balance -> unchangable_cost -> overwork
// define
overwork [label=下層会社が残業]
unchangable_shcedule [label=リスケ不可]
unchangable_cost [label=コスト要求不可]
power_balance[label=力関係]
}
ここまでで、前提知識を見ていきました。
これらが組み合わさったりすると SIer がブラックになっていくわけです。
見ていきましょう。
多重下請け構造 ⇒ 力関係が生まれる
▶上層の会社ほど立場が強く、下層ほど弱いです。
理由は、多重下請け構造が原因で力関係が生まれてしまうからです。
その結果、
- 上層ほど、立場が高く旨味がある。
- 下層ほど、立場が低く旨味がない。
となります。
多重下請け構造 ⇒ 伝言ゲームリスク
▶「上層から下層」「下層から上層」の伝言ゲームリスクがあります。
伝言ゲームのリスクが具体的になにかを、それぞれ見ていきます。
▼ 上層 ⇒ 下層
上層で考えた仕様を伝言ゲームで下層に伝えます。ですが、途中で内容が変わっちゃう可能性があります。
そのため「発注時に伝えたモノと、出来上がって納品されたモノがぜんぜん違う・・・」みたいなリスクがあります。
▼ 下層 ⇒ 上層
下層から中層に「スケジュール厳しいです!」みたいに言っても握りつぶされます。
なぜなら、都合の悪い報告だからです。
その結果、上層はプロジェクトの本当の進捗率を把握できません。
本来は必要だったリスケ計画も立てられず、実行もされないです。
結果、品質が低いバグだらけの成果物を納品されたり、そもそも完成しないリスクがあります。
他にも、下層の会社は残業して納期に間に合わせようとします。つまりは、残業でカバーします。
多重下請け構造 ⇒ ピンハネ
▶ 仕事が上から下に渡るにつれて、ピンハネされます。
「多重下請け構造」のため、仕事は一次請けが貰いそれを下に流します。
そして、会社を経過するごと**報酬が「ピンハネ」**されていきます。
仕事を流しても、アプリケーションを作る上での仕事量は変わっていません。
ですが、下層に仕事が来たときには仕事の報酬だけが低くなっているわけです。
ピンハネ ⇒ 技術者軽視
▶ ピンハネが原因で、マネジメント系優位で技術者系不利になります。
技術者は、ピンハネされている報酬単価なので給与が低いです。 努力して成果を出しても変わりません。
逆に、上層でピンハネして仕事を下に流すタイプのマネジメントの仕事は高給与になります。 なぜなら会社も儲かっているから給与も高いわけです。
少なくともマネジメント能力が高い人が評価される点は良いことです。 (これを本当にマネジメント能力と呼んで OK かは微妙だけど。)
ですが、技術能力が高くてもお金が回りにくい構造が問題です。
強い言葉で表現すると技術者軽視だと思っています。
人月商売 ⇒ 作業の平坦化 ⇒ チャレンジ不可
チャレンジングしにくい環境になります。
人月商売では「作業の平坦化」が好まれます。 (だれがやっても同じような結果になるもの)
なぜなら、スケジュールの予測がしやすいからです。
例えば、以前にやったことある技術・やり方なら「どれくらい時間がかかるか?」が計測がしやすいです。つまり、見積もりやすいわけです。
弊害として、チャレンジをしなくなります。
なぜなら、
-
チャレンジなタスク
-
=予測可能が難しい
-
=見積もれない
となるからです。
見積もりに責任を持つのはマネージャーなどのラインです。
エンジニアが新しい技術を使おうとしたり、ツールを導入しようとしても、マネージャーが責任を負いたくないので承認されない可能性があるわけです。
力関係+ α⇒ 下層会社が残業
⇒ 力関係として下層が弱いので、問題発生時は「下層会社の残業」で解決します。
例えば、上層〜中層のミスでプロジェクトに問題が発生し仕様変更が起きたとします。
本来ならクオリティ(品質)を落とすか、デリバリー(期日)を伸ばします。
SIer では基本的に残業して解決します。そして、コストを SIer の人たちで負担するわけです。
特に立場が弱い下層に行くほど、この傾向が顕著になります。
以上で、SIer になる理由の説明でした。
まとめ
まとめとして、下記のグラフの通りです。
digraph G {
graph[rankdir=TB]
{rank=min;ウォーターフォール;業界構造;人月商売;}
// from 業界構造
業界構造 -> 多重下請け構造
// from 多重下請け構造
多重下請け構造 -> 伝言ゲームのリスク->power_balance
多重下請け構造 -> ピンハネ
多重下請け構造 -> power_balance
// from ウォーターフォール
ウォーターフォール -> 手戻りリスク -> power_balance
ウォーターフォール -> 作業の平坦化
// from ピンハネ
ピンハネ -> 技術者軽視 -> 技術力の低下
ピンハネ -> unchangable_cost
ピンハネ -> マネジメント優位-> 作業の平坦化
// from 人月商売
人月商売 -> 作業の平坦化
// from 作業の平坦化
作業の平坦化 -> チャレンジ不可
// from チャレンジ不可
チャレンジ不可 -> 技術力の低下
// from power_balance
power_balance -> unchangable_shcedule -> overwork
power_balance -> unchangable_cost -> overwork
// define
overwork [label=下層会社が残業]
unchangable_shcedule [label=リスケ不可]
unchangable_cost [label=コスト要求不可]
power_balance[label=力関係]
}
おわりに
わかりやすさ優先で、1つずつのトピックを短くして、脱線しないことを心がけてみました。
この記事がどなたかの助けになれば幸いです。